京王線というプレイリスト

うわあ、この曲すっごく聞いたことある。なのにまったく曲名思い出せない。

あるCMを見た時、そう思った。
洋楽で確実に聞き覚えがある。このしっとりとした曲調は絶対に数年以上にわたって自分好みで、なのになぜか思い出せない。曲名はRoundなんとかだったような…。
英語のヒアリング能力もほぼなく歌詞では検索できない。アプリでふんふふふふふんふんと歌ってみたけど出てこない。頼むよ、私の恥かき損になっちゃうだろ。
記憶をたどりにたどって何年前かあたりをつけて、そしてついにつけるに至ったのだ。iPodを。

iPodは私が高校1年の頃から使っており、社会人数年目まで使っていた。
かなり年季が入っていてiPod nano 4GBとかそのくらいだ。壊れては渋谷のApple Storeで直してもらっていた。継ぎ足し継ぎ足し秘伝のタレ方式でずっと使っていた。
使わなくなった理由は単純で、iPhoneの音楽アプリで足りるなと気づいたからだった。充電面倒だし曲入れるの手間かかるし…と思って、いつしか今まで5、6年放置されていた。

iPodをつけるにはまず充電から始まった。幸い充電ケーブルもありスムーズに充電できた。
つけると奇妙な感覚におちいった。画面、思ったより小さい。ホイールの操作ちょっとめんどくさいな。などなど。記憶が美化されていたみたいだった。
くるくるしながら検索すると、やっぱりRoundなんとかでは出てこない。悩みつつ見てみると偶然見つけることができた。
Foster The PeopleのPumped Up Kicksだった。曲名まったくちがった。だけど聞くと、あーそうそうこれ!Pumpea Up Kicks言うてますわ、となった。

スッキリしたついでにiPodの曲をあさってみた。当時の好きな曲とかなんだったっけ、という軽い気持ちだ。
トップ25などを見てなつかしんでいた私の目に飛び込んできたのが、「京王線」というプレイリストだった。
ずいぶん前にも書いた通り、私は京王線の通学、それも特に帰り道が好きだった。そんな帰り道に聞きたい曲、というコンセプトで組まれたのがこのプレイリストというわけだ。
せっかくなので見てみると、メロディがまったく思い出せない曲があった。聞いてみる。うわっこの曲か!となる。
その繰り返しで気付いた。
このプレイリストめっちゃ辛気くさっ!と。
Alicia KeysのIf I Ain't Got Youがあり、鬼束ちひろの流星群があり、ひぐらし対象aがあり、aikoの悪口がある。とんでもないラインナップだ。
今もまあまあ根暗な私だけど、当時はもっと輪をかけて根暗だった。そりゃそうだ、京王線の誰も車両にいない夜の帰り道が好きなんていうから、陽キャであるはずがない。
これでも進化したんだなぁ…としみじみした。大学生の頃は本当に生きづらいと思っていた。よかった。

音楽は私が思うよりずっと生活に染み込んでいて、いろんな曲を聞くごとに一番聞いていた頃のことを思い起こされる。aikoの悪口は高校推薦で上手く答えられなくてへこんでいた頃によく聞いていて、だから人生の半分以上好きということになる。震える。
そうやって苦楽をともにした思い出があるのはいいことだな、と思った。

とりあえずiPhoneApple Musicに京王線プレイリストをできる限り再現した。今度、夜の京王線に乗ってみようと思う。