お金とわたし

高校のころ、担任の先生が「文章完成法」というのをクラスメイト一人ひとりにやってくれた。
単語だけが2,30書いてあり、その後ろに自分で文章を作り完成させるもので、内容や筆跡からその人の性格を診断するような感じ。
やったのは一度きりだったけど、今でもよく覚えているのが、その最後の方にある「金」と一文字だけがあるところだった。

先生は言っていた。
「この金ををお金の金と見るか、金曜の金と見るか、またはちがう金と見るか。人によってぜんぜん違う」
わたしは当時お金の金と書いた気がする。それ以外思いつきもしなかった。
時々ふいに思い出す。今なら自分はどんな金と見るか。


わたしとお金、というタイトルで作文を書くなら、一番最初は小学4,5年生にさかのぼるだろう。
その頃のうちは、裕福と貧困のあいだからちょっと貧困寄りだったと思う。
あまり貧しいと実感したことはなかったけど、ある日それを感じるようになる。


夏に水着をおねだりして買ってもらった。
その時のわたしは、水着を買ってもらった友だちがうらやましかったような、そんなおぼろげな記憶がある。
でも友だちとプールに行く機会がなく、結局一度も着なかったのだ。
母は怒った。ふだん怒らない母がだ。
「着ないなら買わないでよ!」
ごもっとも中のごもっともなんだけど、その時わたしはびっくりした。
あ、うちってそんなにお金ないのかも。そう思った。


次の記憶は大学3年生だ。
大学2年のころ、わたしは地元でバイトをしていた。
あまりいいところでもなければわたしもやる気がなくヘッポコだったのだけれど、まあそんなことはどうでもいい。
時給はよかったので、約1年でやめた頃には40万円くらい貯まっていた。人生初の大金。
それが、なんとなく気になるマンガを買い、なんとなくお金を使う内にどんどん減っていったのだ。
よく覚えている。11月の原宿、サークルで衣装の買い出しに行った時のATM。
びっくりした。すっっっごい残高減ってて。あ、もう3万円くらいだ、って。
その時気づいた。

お金って、気づいたらなくなるんだ。
何かあった時のために貯めておかなきゃ。

ある意味おびえのような、そんな気づきだった。
これがのちのち就活における安定志向を加速させたと思う。


社会人になってからは、いいめの給料・実家暮らし・無趣味・コミュ障の4拍子そろったおかげで、だいぶお金が貯まった。
使い道もないのに貯まるので、無欲がどんどん加速するようだった。
お金に困らない生活、いい。すばらしい。


と、思っていたら。この数週間でひっくり返されそうなのだ。
Twitterでよく見る、5,000兆円ほしい!!!の画像が前よりちょっと身近だ。
(ちなみに、日本での個人の合計金融資産は約1,900兆円らしい。5,000兆円ってでかい。)
このままその道に進んでもいいし、ちがう道に変えてもいい。
どうするかはもう少し考えて、それから4年くらいずっとまた考えるけど、今のところはそんな気持ち。
きのう思い出したんだ。「何かあった時のためにお金を貯めなきゃ」って思ってたこと。
今がその何かなのかなぁ。